wiki による「共同編集」の難しさ
wiki がその本領を発揮するのは、インターネットを介して多くの編集者を集め、「共同で有用な情報源を構築する」という目的のもと編集者が適切に協働できたときであるといえます。
しかし成功している wiki でさえ、逆に成功しているからこそ wiki が抱える課題が顕著になることがあります。
wiki の難しさは wiki の最も成功した例の一つである「Wikipedia」の中に見ることができます。
○ Wikipedia の面白さ
Wikipedia は"wiki" を使った "encyclopedia"(百科事典)の意で名付けられたネット上の百科事典であり、各国のボランティアが無償で編集作業に加わることによって、現在日本語を含む 27 ヶ国語版が存在します。
wikipedia ならではの面白さは、たとえば映画「スターウォーズ」でお馴染みの登場人物についてさえ非常に詳しい解説を読むことができる点です。
そしていつでも誰でも編集できることによって内容は常に更新され続けるため、紙による百科事典とは全く異なる「常に成長し続ける百科事典」であるともいえます。
たとえば上のような項目も掲載されており、その文末には以下のようなコメントが表示されています。
この「グループウェア」は、コンピュータに関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。
○ Wikipedia で発生する問題
Wikipedia ですでに発生していると言われている問題を整理すると大まかに以下の三点が挙げられます。
- 情報の信頼性の問題
- 情報の網羅性の問題
- 編集者同士の見解の相違の問題
1 は書かれている内容が正しいのかどうか?という問題。
Wikipedia は誰もが閲覧、編集できるので、もし内容に不備があればそれに気付いた誰かが修正することによって内容の正確さが保たれる、という考え方が前提にあります。
しかしこれについては以下の記事で指摘されているような問題点が残ります。
2005/01/10
拡大するフリー百科事典『ウィキペディア』の課題
問題は、特にテクノロジー関連などの一部の記事が、コミュニティーの多くのメンバーによって目を通され、編集されているのに対し、無数にある他のトピックは、ほとんどあるいはまったく精査されていない点にあるという。
これは 2 の情報の網羅性の問題と関連すると同時に、その解決策も同じところに見出すことができるかもしれません。
つまりより多くの編集、校正を行うボランティアを集めることによって、二つの課題を同時に解決し、より広範な項目を網羅し、より正確な事典に仕上げていくことは恐らく可能と思われます。
しかし wiki が抱える根源的な課題は 3 つ目の問題です。
誰でも編集可能であり、かつ編集者の権限が対等であるため複数の編集者間で見解の相違が生まれた場合それを調整することが容易ではないのです。
誰もがどの項目でも編集できるということは、記事の内容が決して完結しないことを意味する。それは同時に、記事の正確さについて承認を行なう、最終的な権限を持つ人間がいないことも意味している。
ブログと比較すると、ブログの場合は基本的に一人で書くため、書いた内容の責任は書いた本人が持てば済むことですが、Wikipedia のような場合にはそうはならないのです。
○ Wikipedia での「編集合戦」
Wikipedia は基本的に「客観的事実」であることを前提に書かれなければならない百科事典であるものの、項目によってはどうしても編集者の主観が反映されやすい場合があります。
2006/01/06
wiki--集団による編集が変える報道のあり方 - CNET Japan
Wikipediaにはさまざまな利点がある。しかし、ブリタニカ大百科事典のような情報源が、専門家の手になる正確な記述を追求しているのに対して、Wikipediaのようなサイトでは、執筆者の意図や個人的な意見が記事に反映されるのではないかと懸念する人もいる。
Wikipedia では複数の編集者間の意見の相違により、しばしば「編集合戦」と呼ばれる現象が発生することがあります。
編集合戦とは2人又はそれ以上の執筆者が、他の人が行った編集の一部又は全部の差し戻しを繰り返すことです。
これを踏まえて Wikipedia の管理者は編集合戦が起こる前に見解を異にする当事者同士で対話を行うように推奨していますが、問題が解決されない場合は以下のように当該項目の編集を行えないようにする場合もあります。
編集合戦が起こった場合、管理者は、その記事を保護することがあります。記事が保護されると管理者以外の人は編集・移動できなくなります。
実際保護の対象となったページが以下で列挙されていますが 2006 年 1 月分だけでも歴史、政治、宗教から芸能人、アニメまで様々なジャンルで多数の項目が保護対象となっています。
これらの問題の解決は Wikipedia の理念上あくまでも当事者間に委ねられており、しかも論争の当事者は互いにインターネット上の見知らぬ他人であるため、解決はけして容易ではないと思われます。
○ 共同編集における合意形成の難しさ
Wikipedia の例に見られるように、wiki の難しさは技術的な難しさではなく、運用の難しさとして顕著に現れると思います。
従来の紙媒体における新聞や雑誌などの編集であれば、基本的に記事は書いた本人が責任の大半を持ち、さらにその上位にいる監修者が最終的な責任を持つ形で責任と権限の所在が明確です。おそらく大抵の場合記者も監修者の意向に沿わない記事を公開することはできないでしょう。
一方 wiki を使ったインターネット上での共同編集においては、そのような上下関係、主従関係はないため、上のような問題が目に見える形で現れます。
しかしそのような上下、主従の関係がないこと(民主的であること?)にこそ wiki のメリットがあるとすれば、それを効果的に運用するためには多くの努力を払う必要がありそうです。
つまり単に多数の編集者が集まるだけでなく、wiki を使った情報共有システムを作り上げていくこととその目的について参加者全員が同意している必要があり、ソーシャルブックマークのようなシステムとも異なって、明示的に「自分が行う作業が他人の利益になる。他人の利益のためにコミュニティに貢献する」という意識で参加者の足並みが揃っていることが望ましいといえそうです。
Posted by Tomoy at 11:14 午前 wiki | Permalink
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「wikiで仕様書を共同作成する」
で仕様書の共同作成について述べましたが、当然問題点もあります。
「wiki による「共同編集」の難しさ」にあるように、不特定多数で編集しあって、喧嘩が起きてしまうことが...... 続きを読む
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