iPod/iTunes が直面する「三つ巴の戦い」
「OSS 版 iTunes」とでも呼ぶべきソフトウェアが来年初めにも公開予定とのニュースをきっかけに、以下のことを連鎖的に考えてみました。
2005/12/26
iTunesに挑むオープンソースソフトウェア「Songbird」 - CNET Japan
- iPod/iTune がユーザーや業界に及ぼしている影響力はどのくらいなのか?
- 今後 iPod/iTunes を取り巻く環境はどうなるのか?
- Songbird のようなオープンソースソフトウェアが登場する必然性は?
○ iPod/iTune がユーザーや業界(ライバル)に及ぼしている影響力はどのくらいなのか?
このトピックについて考える場合、当然ながら「iPod + iTunes + iTunes Music Store(iTMS)」の組み合わせで語らなければなりませんが、例えば iPod を買ったユーザーがその直後からどのような行動を取るようになるのか、最近 iPod を買った自分の実体験に基づき検証してみます。
1) iPod を買う
→ 「この iPod というプレイヤーはすごいなぁ」とまずはハードウェアに注目して iPod を買います。
2) iTunes をインストールする
→ iPod に音楽を転送するためには必ず iTunes を利用する必要があります。
3) iTunes に CD から音楽を取り込む
4) iTunes から iPod に音楽をコピーする
5) iPod で音楽を聴く
6) ある日ふと iTunes を操作しながら「Music Store」というリンクをクリックする
7) iTMS で最新の楽曲を視聴したり、古い好みの曲を検索で見つけたりしながら、つい楽曲をダウンロードして購入する
こうやって iPod を買ったユーザーは iTMS に必然的に導かれ、以下のように「iTMS は盛況」という流れになります。
2005/07/19
iTunes Music Storeからのダウンロード数、ついに5億曲突破 - CNET Japan
上の流れはごく標準的な行動パターンですが、実は私の場合 2 と 3 の手順の間にもう一つ別の手順が挟まっていました。
それは「Windows Media Player に取り込んであった音楽をすべて iTunes に転送する」という作業です。
私が持っている音楽 CD のほとんどはすでに WMP に取り込み済みだったので、それを iTunes に移行する作業が必要だったのですが、iTunes 側にデータ変換の機能がついておりそれは自動で済ますことができました。
かくして iPod ユーザーが WMP を使う理由はなくなり、WMP からリンクされている「MSN ミュージック」を再び訪れる可能性もほぼ無くなります。
冒頭の CNET の記事の中で、
PC用楽曲再生ソフトのシェア1位はMicrosoftのWindows Media Player(45%)で、第2位がAppleのiTunes(17%)となっており、そのほかは大きく離されている
という調査結果が示されていますが、WMP は Windows XP にもともとインストールされているのでシェアの高さは必然的であるものの、iPod ユーザーが増えることによって比較的容易にこのシェアは入れ替わっていく可能性が高いと言えます。
WMP、iTunes というソフトウェア単体で見ると、単なるおまけのように見える無料のソフトウェアですが、このように自社の音楽ダウンロードサイトへの強力な導線として、これらのソフトウェアのシェアは重要であり、後述するように Apple のライバルたちが Apple の非難と攻撃に躍起になる理由の一つはここにあります。
○ 今後 iPod/iTunes を取り巻く環境はどうなるのか?
「iPod + iTunes + iTMS」の組み合わせによって「デジタル音楽市場」は Apple の独り勝ちの様相がありますが、それに対抗するために、長年法廷でも争う仇敵同士であった Microsoft と RealNetworks が和解、さらに提携に至ったというニュースがありました。
2005/10/12
リアルとマイクロソフト、独禁法裁判で和解 - CNET Japan
上の記事でこれまで両社の争点がどのようなものであったかを改めて確認すると、今回一転して両社が歩み寄ることになったことは奇異にすら映りますが、それも「共通の敵」の存在が無視できないものになったことが背景にあるようです。
2005/10/14
リアルCEOが語るマイクロソフトとの「ハーモニー」 - CNET Japan
このインタビュー記事の中で RealNetworks の CEO は提携により実現されるべき効果を以下のように語っています。
--この提携によって、RealNetworks/Microsoft陣営とAppleの関係はどうなるのでしょうか。
焦点となる消費者向けサービスに関していえば、今回の提携によって、当社とMicrosoftは非常に有利な立場を確保できると思います。現在、携帯音楽の分野でわれわれに欠けているのは顧客を魅了するハードウェアです。
携帯端末市場では、iPodを超える製品はまだ登場していないといってよいでしょう。当社とMicrosoftには、ハードウェアコミュニティと協力して、より優れたソリューションを構築する動機があります。このソリューションは必ず登場します。
この発言の意味を要約するならば、Microsoft、RealNetworks 共に自社に欠けているのは iPod のような魅力的なハードウェアであると認識し、両社はそれを Apple のように自前で開発するのではなく、仕様を策定して公開するなどして様々なハードウェアメーカーが参入できるようにすることで Apple に対抗しようと考えている、ということと読み取れます。
まずは Microsoft が WMP を、Real が Rhapsody という Apple の iTMS に相当するサービスを共同で「持ち寄る」ことによって Apple にはない「オープンなサービス」を演出し、さらにそこにハードウェアメーカーも参加できるようにする、というのが二社の戦略です。
この Apple に対抗する試みが実を結ぶまでにはそれなりの時間がかかるものの、「来年のクリスマス、つまり2006年には、iPodと肩を並べる有望なデバイスが登場するはず」と Real の CEO は語っています。
(ちなみに、この話を聞いて私がイメージしたのは、かつての「Macintosh 対 IBM PC/AT および互換機」という競争の構図でした。
Macintosh が CPU からマザーボード、周辺機器、OS まですべて Apple 製であったのに対し、PC 陣営は様々なベンダーの部品の自由な組み合わせによって拡張性、互換性のあるコンピュータを作れるようにしました。
いわゆる「統合型アーキテクチャ VS モジュール型アーキテクチャ」の競争ですが、今携帯音楽プレイヤーとその周辺サービスでも同じことが起ころうとしているのではないか、とふと思いました。)
○ Songbird のようなオープンソースソフトウェアが登場する必然性は?
Apple に対抗して MS + Real だけでなくさらに、オープンソースで iTunes に代わるソフトウェアを提供しようという人々が現れるのはなぜか?そしてそのことが大きな注目と論争の的になっているのはなぜかについて考えます。
2005/12/26
iTunesに挑むオープンソースソフトウェア「Songbird」 - CNET Japan
ニュースの主旨は「Firefoxウェブブラウザとほぼ同じオープンソース技術を基盤にする「Songbird」と呼ばれるデジタル音楽用ソフトウェア」をアメリカの新興企業が現在開発中というものです。
Songbird を開発する企業の創業者は、
「Appleのことは大好きで、ユーザーエクスペリエンスの点で先べんをつけたことには満足しているし、感謝もしている。しかし、市場の成熟にともないアーキテクチャが変化することは避けられない」
と Apple に対する評価の言葉を述べながらも、その限界、デメリットをこう指摘します。
「AppleのiTunesは、Microsoft.comドメインのウェブサイトしか閲覧できないInternet Explorerのようなものだ」
このコメントの意味は先に述べた「iTunes によって iPod ユーザーは iTMS に必然的に誘導される」という説明を聞いた上であればご理解いただけると思います。
さて、ここでは Apple のみが槍玉に挙げられていますが、仮に前述した RealNetworks/Microsoft 陣営が将来的に Apple より優位に立つことがあった場合には結局同じことが起きることは容易に想像できます。
(Real + Microsoft は短期的には共同で Real が提供する「Rhapsody」というサービスの販促を行う旨合意しています。Real + Microsoft がやることも結局は自社サイトへの誘導ということになります。)
Apple に比べて RealNetworks/Microsoft が多少オープンであったとしても結局それは「プロプライエタリ対プロプライエタリの争い」に過ぎない、というのが「第三の勢力」としてオープンソースで iTunes に代替するソフトウェアを提供する人々の「大儀」であり、それを支援する人々もその点を期待しているものと考えられます。
Songbird がリリースされた暁にはこのような環境が実現するといいます。
ユーザーは自分のPCのハードディスクに保存された楽曲のほか、RealNetworksのRhapsodyのようなウェブベースのサブスクリプションサービスやMP3Tunesのようなオンラインの音楽保存サービスにある楽曲を組み合わせてプレイリストをつくることも可能になる。Pioneers of the Inevitableでは同ソフトウェアをPCやMac、Linuxマシンにも簡単に移植できるようにしていく予定だ。
しかしこの試みに対して以下のような冷ややかな声も寄せられています。
実際にアナリストらは、AppleやMicrosoft、RealNetworks、Yahoo、ソニーなどの各社が音楽再生用ソフトを提供しているなかで、新しいデジタルジュークボックスが本当に必要かどうかを疑問視している。
「第三の勢力」の必要性は理屈では理解できても、実際にどれくらいの人がそれを求めるのかはまた別の話、ということになりそうです。
○ 理屈はさておき。。。
ここまで見てきたような、
- 主勢力としての Apple
- 第二勢力としての MS+Real
- 第三勢力としてのオープンソース
というライバル関係の整理はあくまでも「理屈」の世界の話に過ぎません。
結局は「誰が最もユーザーを幸せにできるか?」ということが勝負の決め手であり、他の勢力が「Apple は閉鎖的、排他的」と言おうとも、実際今のところ私は Apple の iPod を使いながらそれによって何か不利益を被っているような感覚はありません。
しかしそういったものが今後表面化することがあるとすれば、ユーザーが「もっとこうしたい、ああしたい」というニーズを持つようになったときに、Apple 一社でそれをすべて実現できるかどうか、継続的によりユーザーに喜ばれるサービスを提供し続けることができるかどうか、というところで問われることになってくるのではないかと思います。
そういった意味で先ほど「Apple VS MS+Real」の関係を「Macintosh 対 IBM PC/AT」になぞらえたのは「パソコンの時と同じように歴史は繰り返されるのだろうか?」ということをつい考えてしまうからでした。
しかし今回そこに「オープンソース」が加わるかもしれない、というあたりが現代的な感じです。
Posted by Tomoy at 05:04 午後 その他 | Permalink
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